日々の戯言


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5月30日(金) NHK 技研公開 2014 [この記事]

昨日 5/29 に NHK 放送技術研究所 (東京都世田谷区砧) の「技研公開 2014」[URI] に行ってきました。今回完全に趣味なので勤務先には休みを取っての行動です。職務で得た知識ではないので NDA を気にせず好きなように公開できるのは良いことですね。

元々は「研究発表2 8Kスーパーハイビジョンにおける光インターフェースの開発と標準化動向」[URI] を一応聞いておくかと考えて、休暇を取得した訳です。2011 年の技研公開で 8K 映像の光伝送に挑戦しはじめたという展示から気になっていたネタ [参考] なので、いよいよ標準規格化されたのか……と考えての行動です。

が……発表を聞いていると「色コンポーネントを 4K 解像度 (3840x2160) に分割して、HD-SDI のフレーム構造にそのまま当て嵌めて」という内容でして……「それって HD-SDI との相互変換 (HD-SDI 複数チャネルの出力しかない機器に繋ぐため) には便利かもしれないけど、純粋にインタフェース仕様として見た場合に微妙じゃね?」という感想を抱きました。さらに 10G の光ケーブル 24 芯を一本に束ねてという話だったので……コネクタコストが高くなりそうだなーと思いました。

このように民生用規格に流用とか全く考慮してなさそうなインタフェース規格ですが、今年の 3 月に ARIB で STD-B58 [公式 PDF] として規格成立しているそうです。

◇◆◇

もうひとつ、多分一昨年までとあまり変らない内容なのだろうなと思いつつも、一応見ておかねばと事前に思っていたのが「展示18 次世代 CAS 技術」[URI] です。

こちら、あまり期待せずに向かったのですが、総務省の「情報通信審議会 <略> 放送システム委員会」[第42回 会議資料] で答申が固まったおかげか、かなり具体的な話を説明担当の方から聞くことができました。

ソフトウェア的に放送波でアルゴリズム自体を更新可能なものとして CAS を実現するというのは一昨年までの展示と変わらないのですが、そのソフトCASが動作するモジュールはCASを管理する事業者を (ダウンローダブル CAS らしいので D-CAS 社とかになるのかしら) 新たに設立して、そこが専用ICを作成し、受信機メーカがその専用ICを受信機に組み込むという形で検討されているようです。

B-CAS の場合は IC カードという形で受信機とは別のハードウェアでしたが、次世代CASでは専用ICという形で受信器に組み込まれる形になるようです。また B-CAS はアルゴリズム全体を放送経由で書き換えることはできませんでしたが、次世代CASでは当然それを可能とするようです。

一昨年までの展示では、CAS を作るのは誰になるのか、つまり受信器メーカーに CAS を実装させるのか、受信器メーカーが廃業したら CAS の更新はできなくなってしまうのかという辺りが未確定な状況でしたが、説明を担当された方がきっぱりと「専用ICを作って受信器に組み込む形になるだろう」と説明されたということはかなり確度の高い情報なのかなと判断しています。

B-CAS 同様に独禁法云々で文句が付く可能性はありますが、CAS の更新が行われる (メーカーの廃業等で更新が行われなくなることはない) ということを担保するためには、妥当な判断なのかなと思います。また独禁法云々で物言いが付くことを想定してか、無料放送に関しては RMP (TRMP と同様の完全ソフトウェア方式) でやることも考えているそうなので、地デジが B-CAS と TRMP で受け入れられている以上、有識者からの文句も付きにくいのかなと思います。

……しかし……「B-CASで色々あったので対策がどうなってるのか気になるんですよね〜」と軽く振ってみたところ「これが対策です」という力強いご回答がありまして……

つまり……

  1. 8K 放送のタイミングで次世代 CAS 導入
  2. 対応受信機 (既存放送+8K両対応) 普及
  3. 既存放送でも次世代 CAS 利用 (T-RMP と同様にデスクリプタ増やして対応?)
  4. [遠大な未来] B-CAS廃止 (or B-CAS 対応受信器が販売されなくなって、変造 B-CAS は有料放送の脅威ではなくなる)

……という心づもりのようです。

まーそれはそれで良いのかも知れないのですが、B-CAS 段階での技術的対策というのはもう完全に破棄された計画なのかなと考えながら回答を聞いていました。

一応、「結果的に B-CAS 段階での技術的対策が一切行われないということだと、『結局対策できない』と見くびられて、新システムがクラックの標的になることも」と質問はしてみたのですが「更新できるし、IC カードではなく受信器に組み込まれた時点でかなり安全性が高まる」という回答だったので、放送業界の CAS 技術研究者的には「B-CAS 段階での対策は不要」という認識なのかなという確信がさらに高まってしまいました。

さらに「IC カードを採用していた理由はクラックに対して交換できることだったけれど、コストの問題で実際には……」という回答もあったので、「こりゃ B-CAS に対する技術的対策は 100% 無いのだな」という確信を深めました。

……技術的対策が行われれば、少しは「有料放送が無料に!」系のスパムメールが減ってくれるかと期待していたのですが、どうやらそうした日が来ることは無いらしいので、残念です。

◇◆◇

補足。クラッカー側に「対策が行えない」と思われることは「クラックによって判明した知識を公開する」ことに対する歯止めを無くします。

一般論として、不正利用を目的としてクラックを行う人にとり回避方法を公開して対策を実施させるというのは手持ち情報の価値を無くすことですから、公開する意味はありません。実際に B-CAS の場合、最終的に各種情報を開示した人の記述を信じるならばクラック完了後 2 年以上、それらの情報は一部コミュニティ内部にとどまっていたそうです。

ところが「対策が行えない」と判断された場合、回避方法を公開しても穴は塞がれず、手持ちの情報の価値が下がることもありませんから面白半分に公開してしまおうという人も出てきやすくなります。

また、対策が行われる場合であれば「不正手段を提供してひと儲け」と考える人にとって「コスト=クラックに必要な労力」で「収入=対策が行われるまでの期間×時間当たり販売量」ですから、どこかでバランスして儲からないから止めようという判断になることもあります。一方で対策が行われない場合だとコストは有限なのに対して収入に上限がない状態になります。必然的にクラックに注がれる労力を増やしても、コスト的にペイするという判断がされやすくなってしまいます。

そうしたものを断ち切る意味でも、「可能な技術的対策を行う」という姿勢を見せておくことは重要に思えるのですが……まー有識者&専門家の方々が大丈夫と判断してるのなら大丈夫なのでしょうね。なにしろ B-CAS のアレコレで十分に教訓は得ているのでしょうし。


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